車で信号待ちをしていた。
横断歩道の左手から中年のおじさん。
右手からおばさん。
2人は丁度真ん中あたりですれ違った。
すれ違い様、おばさんはおじさんの腕をつかみ
大きな声で 「 わかれへんかった? 」 と言った。
おじさんは声こそ聞こえなかったけれど、全く気付かなかったという感じで
大きく何度かうなずいていた。
「 アハハハ 」 と豪快に笑いながらおばさんは自分の進むべき方に向かった。
私はおじさんを見ていた。
おじさんは、おばさんを何度も何度も振り返りながら、
その度に頭をかきながら大きく首を傾げていた。
おじさんは笑い声を残し去っていくおばさんを全く認識できていないのだ。
おじさんの困惑ぶりは、気の毒なほどだった。
それはそうだ。
私だって、母だとしても自信はない。
テレビの通販でもあのバージョンは見たことがない。
顎の下まで真っ黒なサンバイザーがついた帽子に後ろも肩まで黒い布が下がっている。
おばさんは私が思うにダースベーダーなのだ。
「 そら、わからんやろ 」 と言いながら助手席の犬に同意を求めると
犬は助手席に優等生のような姿勢で座っていた。
犬はおばさんだけを見つめていた。
緊張を緩めることなく、まばたきすることもなく・・・。
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