動物病院にいた頃のお話です。
シーズーを抱えて大慌てで入って来られた患者さんがありました。
河川敷でお散歩をしていたところ
草むらから野犬らしき大きな犬が飛び出して来て
噛まれたこと。
その場所の近くにあった動物病院に連れて行ったが、
悲鳴をあげて暴れ、診て貰うどころではなかったこと。
小さい時に診て貰ったことがあると聞いていたここへ急いで来たこと。
などを口早に説明されました。
シーズーはおしっぽを振っていて、暴れて触らせないような様子は
少しもありませんでした。
説明を受けるのと同時進行で検査が始まっていました。
お腹を見た途端に、そのコが誰なのかがわかりました。
そのコのお腹には大きな傷跡があったからです。
子犬の頃から何年ぶりかの再会です。
憶えていてくれたのが感動で胸がいっぱいになりました。
身体を支えながら 「 あぁ 憶えていてくれたの?
大きくなったね。びっくりしたね、痛いね。 」 と声をかけると、
もっと大きくおしっぽを振りました。
その途端です。
大量に吐血し、そして間もなく、息を引き取ってしまいました。
外傷は無かったのに、内臓のダメージがひどすぎたのです。
この日連れて来られたお家に行く前に、そのコはペットショップにいました。
怪我をして病院にしばらく入院していたのです。
私が世話をしました。
私の中の面影は、まだまだ赤ちゃんのような幼い姿です。
大きくなって、私はわかりませんでした。
だけど、あのコは憶えていてくれました。
切なくて、悔しくて、悲しくて、そしてごめんなさい・・・。
堪えることができませんでした。
犬がどういうものなのか、わかっていたつもりなのに
そんな簡単なことじゃありませんでした。
ガツンときました。
犬は忘れない。
この心に、一体私は何ができるのだろう・・・。
あの時の自分自身への問いかけに、今も私は
あの日のあの場所
胸にあのコを抱いているあの時に
ただ戻るだけのままでいます。
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